世界の健康法【カンボジア編】ー コクチョール ー
カンボジアに広く浸透し現代でも日常的に行われている民間療法の一つが「コクチョール」。
「コ (Koas)」は剃る、「クチョール (Kjol)」は風邪や病という意味があり、言葉のとおり風邪っぽい時や、疲労感の強い時に、頭痛や腹痛など、体調不良の際に一般家庭において家族同士で行われています。
コクチョールのやり方
タイガーバームなどのメンソール系のオイルを塗布した上から、コインや瓶のふたなど固いもので、背中や胸部をつよく擦って内出血させます。
背中にくっきりと内出血の赤い文様が刻まれるので、初めて目にすると何事かと二度見してしまいます。
一般の外国人にとっては、まさに「身を削られる思い」。
かなり痛いです。
皮膚への刺激で、血行促進、新陳代謝の活性化を促し、身体にたまった熱を発散することで体調を整えているようです。
一般家庭では家族同士で行ったり、職場のお手洗いなどで女性同士で行っているのも見かけたことがあります。施術後は体中からメンソールの匂いが漂うので、コクチョールを行った後の人はすぐわかります。
内出血の痕は1週間近く残るので、肌の弱い人は皮膚に損傷を伴う可能性があるとも言われています。
初めてこの内出血のあとを見たひとはきっとその鮮やかな模様にびっくりすることでしょう。
施術後は冷たい飲み物は避け、おかゆなどの消化の良い食事をとって休みます。
ローカルのマッサージ店で5,000~10,000リエル(130円~250円程)で行われているところも。
日本の民間療法にも共通点!?
英語ではコインマッサージやコイニングなどと呼ばれているこの療法は、日本でも小児鍼や’かっさ’療法といった、鍼治療の技法のひとつでもあります。近年「かっさプレート」を使った美容法も良く紹介されていますよね。
皮膚の表面を刺激することで、血行を促し、新陳代謝や自己治癒力を高める効果はまさにコクチョールと同じです。
カンボジア伝統医療師協会アドバイザーとしてカンボジア伝統医療の普及のために活動されている、高田忠典先生は、以下のように解説されています。
“コ・クチョールはカンボジア伝統医療を代表する治療法と思われがちですが、一般のクルクメール(カンボジア伝統医療師)によって行われているアーユルベーダ(インド系伝統医療)由来のクメール伝統医学の系譜とは異なり、中国伝統医学の影響が強いベトナムからもたらされたものであると考えられます。
近現代に、労働者として入植してきた多くのベトナム人労働者達を介し、安価で行える理学療法として一般家庭に広まった、カンボジアでは歴史的に比較的新しい伝統医術ではないかと考えられます。”
まとめ
もちろんカンボジアでも街の診療所から国際的な医療機関まで、医療体制は次第に整いつつあります。特に首都プノンペンでは各国の医療機関が集まり、緊急医療体制・入院体制の整った日本の病院もあります。しかし、地方や低所得層にはアクセスできる医療機関が限られていたり、医療費も高額に留まっています。
そのような状況で、今回紹介したコクチョールをはじめとする民間療法や、昔ながらの薬草を使った伝統医療などは、これからも継続され人々の健康維持に活用さていくことでしょう。